電力自由化がはじまると安い電気料金プランが選べなくなるという話
あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。
さて、年明けとともに話題となっている「電力自由化」の話。セット割で安くなる、とかポイントがつくようになるなど、電力会社を変えることでお得なプランが選べるように宣伝されているが、そうでもないケースがあるという話。むしろ電力自由化以降、一部の割安なプランに申し込めなくなるので注意が必要だ。
電力自由化以前
電力自由化以前 (つまり 2016年3月31日まで) では、地域の電力会社(東京電力、関西電力など)が用意する以下のメニューから選択することができた。
- 従量電灯 (地域や容量により "従量電灯A/B/C" の名前がついている。いつ使っても同じ料金。)
- 夜間割引契約 (夜間の 8 〜 12 時間程度割安な代わりに、それ以外の時間が割高になるプラン)
- ピークシフト契約 (夜間に加え、夏の昼間も割高になるプラン)
- 深夜割引契約 (夜間割引よりさらに割安なプラン。電気温水器やオール電化など一定の設備を備えてないと契約できない)
(電力会社ごと割引対象となる時間帯、割引/割増率、基本料金の設計、設備条件などが異なる)
「特に料金プランなんか選んだ記憶がない」という人は、引越と同時に「従量電灯」に契約しているはずだ。(料金プランについて説明を受けた記憶がない人がほとんどだと思う)
筆者は現在東京電力の「半日お得プラン」を選んでいる。
筆者の世帯 (東京都, 2人暮らし, 共働き, 平日日中勤務) では従量電灯Bに比べて毎月1,000 〜 2,000 円ぐらい安くなる。参考までに 12 月の請求額は以下の通り。
従量電灯 B | 半日お得プラン | |
---|---|---|
基本料金 (60A) | 1,684 | 1,296 |
9時〜21時: 170kWh | 4,244 | 5,771 |
21時〜9時: 230kWh | 5,743 | 2,895 |
合計 | 11,673 | 9,962 |
(税、燃料調整費、再エネ負担金などは含んでいない)
電力自由化でどうなるか
電力自由化以降も夜の利用が割安になるプランが用意されているが、新しいプランでは夜間の値引率が非常に悪くなっている。
従量電灯B | 半日お得プラン | スタンダードS | 夜トク12 | |
---|---|---|---|---|
基本料金 (60A) | 1685 | 1296 | 1685 | 1264 |
昼間料金 (kWh) | 29.93 | 43.71 | 30.02 | 33.76 |
夜間料金 (kWh) | - | 12.59 | - | 22.55 |
(夜トク12は30分単位の平均使用電力で基本料金が決まるので、基本料金は幾分安くなる可能性がある)
そして、電力自由化がはじまる 2016年4月以降は 半日お得プランなどのメニューの新規申込みができなくなる とアナウンスされている。つまり、割安なプランは今のうちに申し込む必要がある。(自由化前に申し込めば、引越や建て直しをするまで同じプランを継続利用できる)
なお、新料金プランで開始されるポイントの付与は 1000円あたり 5 ポイント。僅か 0.5% しか還元されない。
電力自由化にともなう実例
夜間の利用が多い場合、夜間にシフトできる場合
平日の日中 (9時から21時) の大半が不在となる場合、半日お得プランなどのメニューに今すぐ申し込むべき。直近の電気料金の請求書 (お知らせ) を手元に用意し、現在の電力会社 (東京電力など) に電話することで、料金プランの相談や変更手続きができる。
東京電力の場合、スマートメーターを導入すると30分単位の電力使用量を でんき家計簿 のサイトで確認できるようになる。
スマートメーターへの交換は随時行っているが、まだ通常のメーターが設置されている場合、「電力メーター情報発信サービス」に申し込むとスマートメーターにすぐ交換してくれる。
電力メーター情報発信サービス(Bルートサービス)について|東京電力
スマートメーターに切り替わると、以下のように時間帯ごとの利用状況が確認できるようになる。
日中はかなり節電できている。もう30分、家事の時間をシフトできるとさらによさそうだ。
オール電化、電気自動車、サーバーなどを設置している場合
オール電化や電気自動車のように大出力を必要とする機器を設置している場合、サーバーなど1日中負荷の変動がない機器を設置している場合、半日お得プランなどを選択したほうが安いことが多い。
電気給湯器や電気自動車のタイマー充電のように深夜に負荷がかかる機器に対して割安なのはもちろんのこと、24時間負荷が均一な機器に対しても半日お得プランのほうが以下のように割安である。
- 従量電灯B: 29.93 * 24 = 718.32 円
- 半日お得プラン: 43.7112+12.5912 = 675.6 円
(1000Wの機器を24時間連続利用した場合)
また、浴室乾燥機やドラム式洗濯機、食器洗い乾燥機などタイマー運転ができるものは夜に負荷を移動できるので、こういったものの消費が大きい場合も半日お得プランなどを選択したほうがよいだろう。
それでもよくわからない場合
エネチェンジなどのサイトで試算をしてみよう。
私の場合、半日お得プランは従量電灯BCに比べ、3年間で10万円以上安いようだ。
電力自由化後のプランで算出すると以下の様になった。
筆者のプランでは "年間 -24,353 円おトク" と出てきた。マイナス、つまり新しいプランでは大幅に高くなるということを示している。なかなかに渋い結果である。
まとめ
繰り返しになるが 4 月以降に半日お得プランに申し込むことはできなくなる。また、新しい電力事業者でも深夜料金が10円台というプランは用意されていない。今後、犬やクマ、金太郎やキノコなどがどんなに電力のセット割を宣伝してこようとも、今の契約を手放すと元のプランに戻せないことを頭にいれておいてほしい。
新しい電力事業者が提供するセットプランなどで安くなるケースもあるかもしれないが、安い深夜帯の料金が選べなくなるのは、明確なデメリットといえよう。
つまり、独り暮らし世帯や共働き世帯など日中は家をあけることが多い世帯は、今のうち (3/31まで) に割安なメニューへの切り替えを検討するとよいだろう。