マジコン対策とか言うならゲームを本気でネット流通させることを考えるべき
しばらく多忙でネット浦島をしているのでよくわかっていないのですが、最近「マジコンを規制すべき」という議論が盛んになっているみたいです。
おおよそ「ゲームに対して正当な対価を払うべきだから、対価なしにゲームがプレイできるマジコンは排除せよ」と「マジコンではなくROMが悪い」と、あと「ゲームの内容なんて買うまでわからないからマジコン+ROMで気軽にプレイできるべきだ」という話な気がします。
パッケージソフトでは誰も幸せになれない
せっかくのデジタル時代なのに、対価の回収のためにわざわざ箱モノを流通させるのはユーザにとってもコストの負担増でありますし、販売元としてもパッケージングは流通コストのために利益が減りますし、店舗では在庫リスクという大変大きな負担を強いられます。だから、マジコンをなくして箱モノ流通を厳密に行っても、ネットで違法ROMが流れて利益回収の場を失ってもどちらもアンハッピーなルートであると言えるでしょう。
未成熟なダウンロード販売
そういうわけで任天堂もソニーもオンラインストアを立ち上げ、無線LANでゲーム機を直接ネットにつなぎソフトを買えるような方向に進んでいるわけですが、(正確な数字はみあたりませんが) ゲオやヨドバシなどのリアル流通チャネルとは比較にならないほど小規模です。
まずゲームを買うまでのハードルが高すぎます。ゲーム機をネットにつなげるためにやれESSIDやらWEPキーやら入力しなくてはいけないわけで(AOSSなどの設定補助もありますが)、おそらく多くのひとは設定をしている間にリアル店舗の売り場を覗くか、Amazonで注文しようと考えてしまいます。ゲームのプレイは「暇だから」「今おもしろそうだと思ったから」といった形で半ば「衝撃的」に買うことが多いでしょうから、買うまでにステップが多いというだけで幻滅です。
日本のいわゆるトラディッショナルな携帯電話は購入時からネットにつながっていますし、決済まで一手に引き受ける仕組みがあるので着うたやゲームアプリならほとんど数分で購入が完了し遊び始めることができます。ゲーム機も例えばWiMAXモジュールを内蔵した状態で出荷し、DLコンテンツ代の一部をあてがうかたちでインフラ代を賄うかたちでユーザへの追加負担を強いない仕組みを取り入れるべきでしょう。購入もウォレットチャージやプリペイドカードなどだけでなく、携帯電話にQRコードを読ませるだけで決済が完了するぐらいの取り組みをしてはどうでしょう?
ゲームの価値をわかりやすくする従量課金制
ゲームをネット販売することにはもうひとつの大きなメリットがあります。それはゲームソフトを従量課金することができるということです。パッケージソフトのほとんどは買い切りで、しかも時間あたりでは比較的割りがいい(映画なら1時間800円、サッカーなら1時間1300円など)のに敢えて従量課金が必要なのはなんででしょう?
例えば新作の某大作RPGを買うときに、6000円という金額でゲームソフトがまるごと購入できるだけでなく、100時間やら200時間におよぶプレイ時間も購入していることになります。おもしろいかどうかよくわからないゲームに対して6000円という金額と数百時間という時間を投じるべきかどうかの判断をユーザに強いることとなります。映画や演劇なら長くても3時間程度の時間ですので価値が見えやすいですが、ことゲームになると6000円で2時間で飽きてしまうのか200時間遊べるのかを見極めなくてはなりません。2時間しかもたないゲームなら1時間あたり3000円になり、200時間遊べるゲームなら1時間あたり30円という計算をいちいち頭の中でするひとはいませんが、少なくとも「このゲームにン千円出す価値あるのかなぁ」と迷うことは誰しもがあると思います。
そこで従量課金という仕組みが生かされます。例えば1時間60円のゲームであれば、100時間あそべれば6000円ですが2時間で飽きれば120円だけ支払えばいいことになります。しばらくとっておいてまたやりたいと思ったときには再び時間単位で買えるわけですから気軽に楽しめるわけです。amazon EC2のクラウドならば1時間で20円程度からインスタンスを立ち上げることができますので、流通量が読めない新興企業の参入障壁も大幅に軽減されます。ちなみにクラウドのインスタンスでゲームを提供するというのは絵空事ではなく、G-clusterというクラウド環境でカプコンがゲームをPC向けに提供した例もあったりします。
大作ゲームといわゆる「クソゲー」が同じような定価でパッケージングで売られている現状では、ユーザもパッケージソフトに価値に対して疑心暗鬼にならざるをえません。6000円払っても楽しめないかもしれないとユーザに恐れられているのです。ゲーム機メーカーはネットの特性を生かして透明性が高いゲームの流通基盤をつくることでゲーム制作会社とユーザの間での信頼関係をとりなおしていくのが急務です。そのためには従量課金による「楽しんだだけ課金する」という仕組みと、そのためのワイヤレスコネクティビティの強化が急務であると思うのです。